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2013年公演の映像鑑賞後の覚書きーオペラ座の怪人ケン・ヒル版

オペラ座の怪人ケン・ヒル版 2013年来日公演鑑賞

いよいよ来週初日を迎える、オペラ座の怪人ケン・ヒル版2018年来日公演を見る前に、2013年の来日公演の映像を見た感想の、覚書きのようなものを残しておこうと思います。多分今回の公演を観たら、すっかり焼き直しされちゃうと思うので、今後の比較用に。(大したことは書いていないと思うけれど、作品について何もお知りになりたくない方は、ここから先読まないでくださいね(笑))



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前回の来日公演は以前BSジャパンで舞台中継が放送されていました。この録画を見せて頂くことが出来たので、かれこれ4、5回は観たでしょうか。

実はJOJさんがケン・ヒル版に出演することになって、色々調べると感想・評価は様々で。実際劇場で初めてALW版じゃないと気づかれる方もいたそう。まあ、オペラ座の怪人と言えば、観たことがない方でも「ジャーン、ジャジャジャジャーン」だと思ってるものね(笑)。


基本的にはこっち(ケン・ヒル版)の方が原作に近い。ガストン・ルルーの「オペラ座の怪人」って、沢山の登場人物がそれぞれの事情を抱えつつ生きてる雰囲気と、そこにPhantomが起こす殺人事件や怪奇現象を、事件簿でもつけているような感じで淡々と描いている感じ。喜劇と怪奇物が二重螺旋のように同時進行している感じというか。あえて言えばChristineとRaoulのラブストーリー要素はあるけど(笑)。こんなことを言うと怒られるかもですが、ハラハラはするけど、ある意味でワクワクするとか、ときめくような進行でもないですよね。ただちょっと磨いたり、パーツの並べ方を変えたら、とんでもなく魅力的な仕掛けのモトがゴロゴロしてる感じ。そしてそれが大成功したのがALW版なんだろうな。

ALW版から原作に直接思いを馳せるところはあまりないんだけど、ケン・ヒル版はそれよりずっと素朴で、本当に原作とALW版の中間にある感じ。初回見てて思ったのは、初めて見る作品なのに、妙にあるあるな感じが(笑)。ALW版の舞台や映画のシーンを思い出すところがそこここにあって、その度に、「あ、ALW版と似てる!いやいや、こっちが大元ね」っと頭が混乱(苦笑)。面白かったのが、舞台版ではなくて映画版を思い出すところがあったこと。余談ですが、ジョエル・シューマッカー監督の世界観は本当に素晴らしかったけど、あの時、ああ舞台版より原作に忠実だなと思ったんだった(笑)。(たとえばパンジャブの縄の場面、白馬が出てくるところとかね。そして映画公開後、舞台版に反映されたところもあったw)


それとやっぱり難しいなと思ったのは「喜劇」のとらえ方かしら。
あまり偉そうなことを言えるほど知識があるわけじゃないですが、喜劇って、ただ面白いことを言ったりやったりして、それを見てワ~って笑うのは理解しやすいけども、誰がどの立場から見て、面白いと思うのか?そこにいる人々の生様を、どこか高みから眺めて面白がるような、そういうタイプの喜劇は、すっと一回では理解しにくいし、そこに歴史とか民族的な背景とか、言葉のニュアンスとかまで要求されると、結構ハードル高い。
実は先日見たオックスフォード大学演劇協会の十二夜も、あれ喜劇って言われても、すごく複雑な問題抱えているようにしか見えなかったし。

ケン・ヒル版で一番そう思うのは、やはりラストのシーンかな。
「友達もなく、なくなるのではない 」という言葉の解釈の仕方というか。死に際に、ファントムのとった行動によって、彼は終生皆の心に残ったという意味ではないかしら?それまでの誰にも認められなかった生から、死によって永遠に皆の心に残る、そういう意味で人として生きた(活きた)というのかな?
人として生きているのが当たり前の私たちに、本当のPhantomの痛みを理解することは難しいわ。

He will not go without a friend
Will not go without a friend
Without a friend
Without a friend
And so we end

一件落着から物語の終わりへ、ここの流れもしゃれている。
でもこれは二時間半の夢の世界。夢から醒めて、後味よく劇場を後にして家路につきましょう。
カーテンコールのPhantomの登場の仕方はまさにそんな感じに見えました。



さらに箇条書きだけど、メモとして。

ChristineがPhantomとRaoulの間で揺れ動くというロマンチックさがない分、出番が少ないにも関わらずPhantomに焦点が絞られている感じがする。ChristineはPhantomの所業を愛からの行動と理解はしているが、彼に対して愛はないとも確信している。

地下の迷宮でPhantom一世一代の告白「Ne'er Forsake Me, Here Remain」、Christineは何度も魔法にかかりそうになる。Phantomが懇願する(今までありえないこと)。でも同時にChristineは魔法から醒める。残酷ですね。ChristineにとってはPhantomは天使、現実であってはならないもの。だからPhantomが現実に愛を求めることも、それに応えることもありえない。 そこはぶれない。

Web上の音源で、ピーターさん以外のPhantomも聞いたことで、ピーターさんのPhantomの説得力というか、声の伝える力を再認識した。

ケン・ヒル版の良いところはキャスト総勢のコーラス部分 基本的に全員歌が上手い。
年配のキャストまで声が出てるのは素晴らしい。一幕ラスト、Phantom、Christine、Roulの三重唱が素晴らしい。Madam GiryとRichardは芸達者だし、拷問部屋のシーンのペルシャ人の歌声は本当にすごい。生の舞台の醍醐味だし、オペラからの曲が聞き応えある。


ALW版と、原作と、ケンヒル版との関連を考えながら観るという楽しみ方もできるなと思ったり。
ポケットから二万フラン消えるところは、原作を読んでいれば、ああここ、こんな風に描いたのねと思うし、鏡のからくり、オペラ座屋上でのシーンは、ALW版を見ていればあるあるが楽しめるし、一見違うけどもプリマドンナのシーンを思わせるやり取りもあるしね。


ティーの占いやシャペロンの習慣
ほんのちょっとしたことですが、こんなことも知って観ると楽しいなと思うこと。例えばだけども...
劇中で出てくるティー占い。ハリーポッターでも有名だけど、どちらかというと19世紀のイギリスの習慣らしいけども、結構一般的にやる方もいらっしゃるらしい。紅茶を飲んだ後の茶殻の形や茎の位置で吉凶を占う。

それとRoulが楽屋にChristineがPhantomと二人きりでいることに、シャペロン(chaperon)も同席させないでって激怒するシーン。シャペロンは若い未婚の婦人が社交場など公の場に出るときに付き添ったり,男性同席のパーティーに付き添う年配の既婚婦人のことで、原作でもほとんどのバレリーナには母親が付き添っているって書かれていました。つまりそれがいないで二人きりで部屋にいるってことは、当然そういう事という理解w

ほんの1,2例だけですけど、他にもいろいろとあると思う。



あと最後に残念というか、こうだったら良かったなという点。

衣装、メイク(胸まで意識してほしい)、モーション をもう一工夫ほしい。例えば金髪に対しての肌色、そして衣装がベージュと白ではメリハリも美的にもちょっとかなと思う。言語からの情報を捕捉するためにも、特にこの公演が日本限定だからこそ、視覚から受ける情報が多い方が、より理解を深められると思う。舞台の楽しみとしても、何より美しさは大切だしね。

これ以前のピーターさんを観ていないので、確証はないけれど、この時70歳という年齢を考えると仕方がないと思うけれど、ピーターさんはこの時はもう立ち居振る舞いにキレがあるとは言えない。かなりの高齢のPhantomとしてはありかもしれないけど。そういう意味でも、視覚情報的にはつらい部分もあったと思う。でも迫力と一途さと悲しみを表現して余りあるお声は、素晴らしかったけれど。ただそれでもCDの録音はさらにさらに素晴らしいけどね。

全体的に喜劇部分担当のメンバーはモーションも、コミックセンスも伝わってきたと思う。
それに対してシリアス部分というか、歌やセリフが重要と思われるところが、字幕があっても、全部受け止めきれないところが、残念だなと思う。何度か見ればわかってくるけれど、普通は同じ舞台を何度も観ないものね(笑)。

舞台装置は、簡単で目が吸い寄せられるというようなものはあんまりない。立体感もそんなにはないかな。ファウストの背景はなかなかきれいだと思う。普通のミュージカルとしては豪華さがないかもだけど、反対にストレートプレイ的な味わいは、あるんじゃないかな?それと来日公演というか、ツアーは全般にどうしても装置はシンプルになる傾向は、仕方がないのかも。移動や組み立てを考えると。


二幕で銃を構える時に、弾はいらないって言うくだり、銃はただパンジャブの縄から首を守るためなのね。でもそこ初めてだとちょっとわかりにくいかも?


そういう中では、ピアノのライブ感(一部セリフのように参加 )は良かった。バレリーナJammes(ジャンム)もいい味 出していました。彼女のモーションは大きくてわかりやすかった。


そういえば当然だけど北欧、スウェーデン出身のChristineは金髪碧眼。
でもALW版では茶色。あれってやっぱりオリジナルのサラ様に合わせてるの?
そういえば、2015年にJOJさんのPhantomをWest Endで観た時、オルタネイトのクリスEmmie Christenssonさんは、私が観た唯一の金髪クリスでしたけども。(ただし金髪の日と茶髪の日がありました)余談ですが、彼女は本当にスウェーデン出身で、その後オペラ座の怪人スウェーデン公演のChristineになりました。




メモなのでまた書き足すかもですが、何かの参考になればと思うので、公開にします。



以下は参考にさせて頂いたブログです。