今日も明日もJOJさんとか色々と

ジョン・オーウェン=ジョーンズさんをLove&Watchしてます。その他のネタも多し。

オペラ座の怪人25周年記念コンサート舞台と映画両方を見ての感想/POTO remains FOREVER !

以前「いったい「オペラ座の怪人」という作品のどこにそんなに魅かれるのですか?」と聞かれたことがある。私は答えた。
 
「怪人と美しい歌姫との間の成就できなかったラブストーリー」という一見誰もが取っ付き易い物語の裏にとんでもなく隠微で危険な、そして美しい世界が隠されているから、と。
 
今回この25周年記念コンサート3回、続いてWEJOJファントム2回、昨夜の映画1回を連続してみて、じぶんの中でひとつのカタがついた、というか今まで自分の中で引っかかっていたことを全て納得した。ほぼ思っていたとおりだった。初めてこの作品をみてからおよそ20年、今になってもまだ新しい発見があるとは、本当にこの作品はすごい。まあ、他のひとはとっくにわかっているのかもしれないけれど、こういうのはとても個人的なことなのでじぶんじしんで納得する必要がある。要するに他のひとがどう思っているなんてことは関係がないのだ。
 
コンサートは本当に素晴らしかった。あの会場の片隅にいられたことが心から嬉しかった。ロイヤルアルバートホールという類まれな会場。宝石のような音を奏でるオーケストラ。映画の中でしか見られなかったシャンデリアの輝き。シーンごとに変わるスクリーン(そんなとこで失敗すんじゃねーよ、とも思ったが)、マリア・ビョルセンの世界観を見事に踏襲したステージセット(特にキャンドルに要注目)、ハンニバルからバレエ、マスカレードに至るまで、衣装からキャスト、ダンサーまでたったひとつの手抜きもないアンサンブルシーン。初日は瞬きする間も惜しいくらいだった。頭の中には素晴らしい、素晴らしい、という言葉だけがぐるぐる廻っていた。
 
フィナーレで登場したサラ・ブライトマンALW卿が「私の音楽の天使」と呼んだ彼女がPOTOを歌っている。その後ろにはJOJさん。コルムさんもアンソニーさんもいる。ついでに(!)ピーターさんも。そしてミュージック・オブ・ザ・ナイト。初日はもう感動でいっぱいでちゃんと聴いてやしなかったが、2日目マチネにこの曲を歌ったJOJさんのパフォーマンスはもう、10年に1度しか聴けないようなレベルだった。ずらっと並んだファントムが交互に歌ったのだが、この回だけJOJさんのパートが多く設定されていて、あのRAHいっぱいに彼の声が響き渡った。なんという声。これは錯覚でも何でもないのだが、彼の「be------------」が流れた瞬間、5000人が聞きほれて、RAHから全てのノイズが消えた。この奇跡的な瞬間を前にしてもう泣くことしかできなかった。終了後、同じように涙しているSさまを見つけてどれだけ嬉しかったことか。
 
ってまだ同じこと書いてるし^^;。結局のところJOJさんが出たフィナーレしか覚えてないのかと言われそうなんで本編に戻ることにする。実は感想を今まで書けなかった理由、それはラミンファントムの歌唱に満足できなかったからだ(ヘイドリーはなんというかちょっと対象外。私はあのクリスピーな声が割と好きだったけど要するにラウルってどうでもいいのよね)。ラミンファントムの演技は遠目からみても実に素晴らしくて、ラストの「Christine, I Love You」から「You alone・・」には毎回泣かされたけれど。コンサートを見て思ったのはまずシエラの素晴らしさ。歌唱から演技、踊りまでまったく非の打ち所がなく、それも3回とも全て同じ水準だったこと。もちろんラミンもマンボウ(ヘイドリーね)も一般の水準よりはるかに上を行っているのでオペラ座フリークじゃなかったら、じゅうぶん満足しただろう。でも私たちはなんといってもWEJOJファントムを聞いてしまっているので、結局のところそれ以上のパフォーマンスをラミンが見せてくれないと満足できないのだ。ほんと罪だよ、JOJ
 
でもシエラは違う。凄かった。彼女はこのコンサートでおそらく歴史に残るクリスティーヌになるだろう。最初から最後までひとつの狂いもなくクリスティーヌだった。あの超絶技巧なソプラノの安定性。もはや女JOJです。ハンニバルのダンスシーン。可愛い二の腕(ほんとに可愛いので要注目)、少女と大人の間の微妙な年代にいる女の子。天使のような歌声。可憐な歌姫。ラウルに恋する女の子、でもファントムにも魅かれている。ラウルに食ってかかる表情、そして最後のシーンでファントムに指輪を返すときに彼の手にすがる表情(涎までつけている、圧巻!)。私はこのシーンで初めて「オペラ座の怪人」が「Love Never Dies」につながった、と思った。このシーンはもちろん昨日の映画を見て、クローズアップされたファントム、クリス、ラウルの表情を間近に見ることができたことによる。
 
以下、昨日見た映画について。まず本編は3時間15分。途中でインターミッションが20分入る。フィナーレもノーカット。ただし全て10月2日ソワレの映像で、他の回のは一切インサートされていない。JOJさんファンとしては2日マチネのフィナーレが相当素晴らしかったのでかなり残念。あとソワレのラミンの歌唱は3回のうち一番出来が良くなかったのでこれが残ってしまうのは彼にとっても少し不本意だったかもしれない。でもラミンのクローズアップショットが多いのでそれを補って余りあるとも思うが。
 
コンサートの記録映像という側面もあるからだろう。オープニングは開演前のRAHの様子を存分に映している。ステージ前にはレールを敷いてオートで動かすカメラを配置して天カメも数台、ステージ横や正面からも撮っていたのでスイッチングで切り替えて映像を作っている。すぐ気がつくのはクローズアップショットが多いこと。これは本当にありがたかった。たとえコンサート会場にいたって細かいところまでは見えないんだから。
 
ただそれぞれのキャストの衣装やステージセットの素晴らしさまでは映像で表現できていない。これはお金と時間をやりくりして、高いチケを買ったひとだけの特典かもしれない。オーケストラのあの繊細な生音も表現できていないし、映像のカラークオリティも今イチ。HDカメラで撮って、デジタル再生でこの色はないだろうと思ったが、まあ、これは映画館のシステムによるものなので、この分野では水準の高い日本の映画館は大丈夫だろう(と信じる)
 
で、突然話は飛ぶが、今回のコンサートにラミンがキャスティングされた理由、これは25周年を機に変える新演出のひとつが「ファントムを若返らせる」からだろう。WEの次期ファントム、ピーター・ジョーバックを見ればわかるし、今回ラミンのファントムメイクが今までと全然違うものになっていたことからもわかる。実に美しく作りこんでいた。帽子もマントも通常の舞台版より気合を入れてラミンファントムを飾っていた。若くて危険な魅力に彩られたファントム。オリジナルのマイケル・クロフォードさんが作り上げ、JOJさんまで踏襲されてきたファントム像がここで終わることになる。
 
あとひとつ完全に間違えていたことがあったので訂正しなければいけない。私は2007年冬に見たラミンのファントムに非常に強い印象を受けていたので、今回実はそれがもう一度見られると思って楽しみにしていた。でもコンサートを見ただけでは少しもそう思えなかった。理由は歌唱。あの情熱的でダークな歌い方はなりをひそめていて、かなりふつうっぽかったからだ。なーんだ、これじゃJOJさん以上にセクシーじゃないじゃん、期待してたのにがっかり、と思ったが映像を見て変わった。ラミンのファントムはじゅうぶんすぎるくらいダークでセクシーで情熱的だった。
 
ブレスの入れ方、切ない声(要注目)、そしてクリスを見つめる視線。その全てがラミンならではのものになっている。そして手。きわめて個人的にだが、ファントムにとって手は重要な小道具だ。PONRではこの手がクリスの身体を這う。ラミンの手はまさにファントム役者にぴったりでクローズアップショットで見るとどきっとするような動きをする。そう、それでいいのだ。
 
先に書いた「今まで引っかかっていたことが全て納得した」という意味。これは書いてみるととても簡単なことで、今回のPONRではクリスティーヌが「Burst into Bloom」した瞬間が明確にわかったからだ。シエラの熱演ぶりといったらこれはもう凄いものだ。ここでは完全にファントムを圧倒させないといけないのだが、シエラはもう完璧だった。前半で可愛い少女っぷり(メグとじゃれてたり、ステージ脇にダッシュしていったりとか)を見せていたクリスがPONRでは登場した瞬間から脚を開いてベンチに座るのだ。そして手にはりんご。このモチーフは書かなくてもわかるだろう。そしてファントムから渡されたワイン杯を飲み干す。ファントムの手がクリスの身体を這う。恍惚の表情。ここでクリスティーヌはファントムのものになったのだ。まず心が先に。そして身体は後で(だから「Love Never Dies」を書きたくなったんだろうと私は邪推している。そら書きたいだろう。私だって書きたい、細々と(爆))。
 
なるほど、演出家はこういうファントムを描きたかったのか。これならラミン以外のキャスティングは考えられないだろう。JOJじゃ無理だ。熱烈ファンの私も認める。
 
どなたかがおっしゃっていたようにラウルが冷たかったとはまったく思わない。それどころか愛情にあふれていたように思う。ラウルがクリスの真の愛情を得られなかった理由=LNDにつながったたったひとつの理由、それはクリスティーヌがPONRでファントムによってBurst into bkoomしたからだ。もっと簡単に書けばセックスのエクスタシーを擬似体験させられ、さらにそれが彼女の芸術魂を灯したから。「ブラックスワン」なんかでも描かれていたけど、芸術っていうのはその辺りの感覚を動員しないと到底理解(or成就)できない類のものが存在しているのだ。見える人には見える、見えないひとには一生見えないのでここは「No argument」。
 
それにしても圧巻のラスト。内股で(!)佇むラミンファントム、何度でもいうが「Chiristine, I love you」から「You alone・・」まで涙無しでは見られない。ラミン圧巻の演技。クローズアップショットで見る悲しみに満ちた眼、やるせない手の動き。指輪を返しにくるクリス、シエラが見せる慟哭の表情。脇の階段でクリスに手を伸ばすラウル。でもその手は永遠にクリスをつかむことはできない・・。
 
いつまでも見ていたかったこの映像。本当に本当に素晴らしいコンサートだった。上演してくれて本当にありがとう!ラミン、シエラ、ヘイドリーほか全ての関係者の皆さん、本当にありがとう!これからもずっと「オペラ座の怪人」を愛し続けます。I Swear!