今日も明日もJOJさんとか色々と

ジョン・オーウェン=ジョーンズさんをLove&Watchしてます。その他のネタも多し。

WARHORSE is just amazing!/「ウォーホース」は宝石のような舞台!/作品が最大限に尊敬されているのがよくわかった

べつに今さら明言することもないけれど私は若くない。というか大学1年生の息子もいるくらいなので立派に中年である。ふだんネットで舞台関係のおしゃべりするお友達やここのブログに来てくださる方の殆どもおそらくかなり年下だろう。普段このブログで書いていることなど、ちょっと意地悪なひとだったら「年甲斐もなくよくやるよね」なんてことを言われそうだが、幸いなことにそういう経験は一度もない。lucky me!
 
でも若い頃に戻りたいともまったく思っていない。以前、村上春樹さんも書いておられたが、あの時代は一度過ごせばもうじゅうぶんだ。たくさんのひとと一緒にこのうえなく楽しい経験もいっぱいしたし、感動する体験もいっぱいしたけれど、シンドい思いもたくさんした。多くの感動を得たけれど、苦しい思いもかなりしたように思う。なので神様が戻してあげましょうと言ってくれても遠慮する。今のこのトシでよい。
 
ま、それはあまり関係のない話。で、何が言いたいというと「トシをとってくると、かなりのことが「感動体験済みファイル」に入ってしまう」という問題?を抱えることになることだ。つまり感動する機会が減る。子育ては大変楽しかったが息子が大学に入った時点で殆ど終了、旅行は10代の頃から色んな場所にいったので行きたい場所はあと1ヶ所(アッシジ)を残すのみ、映画、本、アート、舞台等々はひたすら「感動すること」を求め続けてきたので、ここ数年で極端に減ってきているのを実感している。そう、トシを取ると感動の蓄積が増える分その機会が極端に減ってきてしまうのだ。
 
いや、そんなことはない、私は年をとってもいつも色んなことに感動していますわ、というひともいるだろう。でもそういうのは別の問題だ。若い頃に感動体験をあまりしてなければ年取って初めて接して感動するのはごく当たり前のことだろう。平家物語だったか「見るべきものは見つ(この世の中で見るべきものは全て見てしまった)」という一節があったが、何年も前かこのフレーズはいつも私の頭のどこかにある。年代的に早すぎるだろう、とか、まだ世の中には感動できるものがたくさんあるだろう、とか色々思うが、実は好みが割りと偏っているのでそう話は簡単にいかない。だからいつも思っている。じぶんが心底感動できそうなことがあったら、とりあえず何をさておいても駆けつける、と。今回のオペラ座コンもJOJさんの歌唱を聞きにいくのも全てはそれが理由。
 
でもまたひとつ感動を見つけた。「WARHORSE」。すでにトニー賞も受賞しているし、ロンドンでは数年前からやっている舞台でNYでも大絶賛を浴びているので、完全に出遅れているのだが。
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 大感動だった。見ている最中から涙が出てきて、インターミッションではお隣の方と二人で顔を見合わせてため息をついた。「シンジラレナイほど素晴らしい舞台!」
 
2幕も同じように見て、そして舞台が終わった。スタオベそしてカテコの最中も涙はまったく止まらなかった。私は舞台に感動すると劇場の周りをぐるぐる廻る癖があるのだが、昨夜もやった。劇場がメトロポリタンオペラハウスの隣という絶好のロケーションだったこともあって、ひたすらあの辺りを歩き回っていた。
 それにしてもなんというレベルの高いプロダクション。会場のどこからも見やすいように半円形に作られた舞台と筆で掃けたような形に作った背景のスクリーン。ここに投影されるシーンの特筆すべき素晴らしさ、達者な役者たち。そしてなんといっても南アフリカのパペットカンパニーによる馬のパペット。かなり話題になっていたし、友人が取材に行ったのでその素晴らしさも聞いていたけれど、こんなのってあり得るのだろうか。パペットなのに実際の馬にしか見えない。おまけにジョーイの気持ちまでが見える。あのパペットの使い手のお兄さんたちはどれほどの時間をかけてあの動きを習得したのだろう。
 
ストーリーはよく知られているし、スピルバーグ監督が映画化するのでここでは書かない。そもそも私は馬が大好きで、子供の絵本の読み聞かせでも馬の話のときは自分が泣いていたくらいなのでこの作品には本当に本当に感動した。そしてメトロポリタンオペラハウスに隣接するリンカーンシアターという極上の場所で上演されている理由もよくわかった。この「Warhorse」という作品はその質の高さが最大限に「尊敬」されているのだ。アメリカが世界に誇るメトロポリタンオペラのプロダクションとほぼ同格の扱いをされているのだ。
 
凄いな、と思う。心から。こういう作品を制作できて、それを見に来るひとたちが日夜あふれかえってるNYとロンドン。成熟した大人の文化が備わっている社会。かなわないよな、とも。メトロポリタンオペラハウスにNYシティバレエ、NYフィル、ジュリアード、フィルムソサエティ他世界レベルのパフォーミングアーツが集まるNYのリンカーンセンター。建物を見上げながら思う。「蓄積」が違うのよ、と言われている気がする。これはロンドンでも同じように感じたことだが。そう、たぶんいつもの考えすぎなんだろう。でも思わずにいられない。この場所に身をおきたいと。
 
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昔から持っている私の夢。うんと年をとっていつかひとりになるときが来たら、昔住んでいたSOHOのアパートのお隣のおばあさまのようにシーズン中はメトロポリタンの桟敷席(まあ、ファミリーサークル前方程度が希望だが)に通いつめること。寂しい人生って言われるかもしれない。でもそんなことはない。この場所で夜毎繰り広げられるオペラを毎日見ることができて、そしてその記憶とともに人生を終えることができたらどんなに幸せなことだろう。そんなことを考えながらいつまでもリンカーンセンターをうろうろしていた10月7日の夜だった。
 
おまけ:今月ソロコンサートをやるヨナス・カウフマン。「ファウスト」にも出ます。いけるかわからないのにチケ買っちゃってます。めちゃ小顔ですね。どこかのウェールズ出身セクシー男性リスト41番目のひととずいぶん違うよ(爆)。愛してるけど。今季の指輪第3作「ジークフリード」には出てくれません(悲)。まあ考えてみればあたりまえなんだけどね(ジークムンド死んでるし)。
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