今日も明日もJOJさんとか色々と

ジョン・オーウェン=ジョーンズさんをLove&Watchしてます。その他のネタも多し。

3月10日マチネ「雨に歌えば」/ソワレ「Sweeney Todd」舞台感想/劇場一杯のにこにこ顔と地鳴りのような観客のコールが忘れられない!②

前記事の続きです。今度はソワレに観た「スイーニートッド」。ぴんぼけてますけどまずマイケルさんとイメルダさんのアデルフィ劇場SDの写真です。3月10日はプレビュー初日。しかしもう既に最高レベルの舞台。カテコはアデルフィで初めて聞く、地鳴りのような観客のコール。終了後のステージドアにはざっと100人くらいが集まっていたでしょうか。そして私が驚いたのはハゲ頭の数。すみません。決して揶揄しているわけではありません(笑)。ようするに中年以降男性がたくさんSDに来てたということ。
 
この劇場で「Love Never Dies」をやっていたときは1回もステージドアに行ってないのでわかりませんが、オペラ座でもレミゼでもSDに集まってるのはたいてい女性です。若い人から年配まで。でもこのスイーニートッドSDはかなり男性が多かった。これは驚きでした。二人の主演俳優がどれだけ広い人気を持っているかは知っていましたけれどこの日SDに来てた人数をみて改めて思い知りました。というわけで外には出てきてくれませんでしたけど、窓から手を振ってくれたマイケルさんとイメルダさん
 
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    (こうしてみるとふつうのおじさんとおばさんですが^^;舞台に上がると凄い。俳優さんって本当に凄い)
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        (ああ、さくねんはここに「Love Never Dies」の大看板がかかっていたんですよね・・(涙))
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   (Chichesterは円形の舞台だったんですが、アデルフィは横長。高さが少し高かったような気がしました)
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メインャスト:スイーニートッド:マイケル・ボール、ロヴェット夫人:イメルダ・スタウントン、ターピン判事:ジョン・ボウバンフォード:ピーター・ポリカルポウ、ピレリ:ロバート・バート、ベガーウーマン:ジリアン・カークパトリック、
ジョアナ:ルーシー・メイ・バーカー、アンソニー:ルーク・ブラディ、トビアス:ジェームス・マッコンヴィル

セットはさくねん10月にチチェスターで観た舞台と殆ど同じ。マイケル・ボールさんはもう英国が誇る大スター。数々の舞台からコンサート、TV出演も軽々とこなすスターです。イメルダさんは舞台はもちろん映画、TVでも活躍する、いまの英国を代表する女優さんです。個人的には映画「ヴェラ・ドレイク」 の彼女が印象的。

「スイーニートッド」の今回の舞台は御大スティーヴン・ソンドハイム氏がBWトランスファーを希望しているそうです。然しながら主演二人が余りにも忙しいので現時点では未定とのこと。でも周辺情報によると、上演の可能性はかなり高いみたいです。

ストーリーは19世紀にロンドンで実在した殺人鬼をモチーフにしていると言われており、映画化も小説も出ていますが、パターンは幾つかあるようです。ティム・バートン監督、J・デップ&H・B・カーターのVer.がいちばん有名ですが、これはソンドハイム氏の舞台版を踏襲しています。曰く:

愛する妻と娘と幸せな生活を営んでいたベンジャミン・バーカー。しかし妻に恋した悪徳判事のタービンに陥れられ、流刑されてしまう。若者アンソニーの助けで脱獄に成功し「スイーニー・トッド」としてフリート街に戻ってくるがラヴェット夫人から妻が自殺し、娘のジョアンナはタービンに監禁されていることを知り、復讐を決意。
ロンドン一まずいパイ屋のロヴェット夫人と手を組み、ペダルを踏むと下に落ちる椅子を考案し、やってくる客を剃刀で次々と殺害。その肉を使った(震)ミートパイは飛ぶように売れる。やがてタービンへの復讐にも成功するが殺人の快楽に目覚めてしまったスイーニーは次々と殺人に走り、精神に異常をきたしていたベガーウーマンの妻、スイーニーを愛するが故、真実を伝えなかったラヴェット夫人も焼却炉で殺害してしまう。呆然とするスイーニー。しかし同じ狂気に蝕まれた下働きのトビーの手によって喉を切られてしまう・・

というストーリーです。なんかもう救いがないですよね^^;。実は余り好きな作品じゃないんですよ、スイーニー自体は。何で?剃刀が怖いんです。先端恐怖症というか刃が怖い。そしてマイケルさん、余りに上手い、髭剃りとか。ついでに喉ざっくりも(怖)。怖くて仕方ないんですけど、チチェスターも今回の舞台も全く眼が放せませんでした。余りに素晴らしくて。

くま系俳優元祖みたいなマイケルさん。普段のお姿とお声はどちらかといえばほわーっと、ぽにゃーっとした感じでいらっしゃるのですが、スイーニーの舞台は全く違います。もう登場した瞬間から怖い。背中が氷のように冷たい。そしてあの狂気の眼。どのタイミングでグラスを覗いても常に同じ。もう間違いなく狂気の世界に入ってしまっている、一瞬たりとも変わらないあの冷たく鋭利な剃刀のような目線で演技している。カテコで出てきたときは普段のマイケルさんに変りつつあったけど、私は真剣に怖かったです。

舞台上で圧倒的な存在感を持つのが赤い椅子。スイーニーのお客さんが座る。そして喉を斬られる椅子。舞台ラストシーンではセット上段で殺されたはずのロヴェット夫人とスイーニーが座っている。不気味に響く笛?の音。この舞台セット自体が俳優たちの一人のように演じている、スイーニーの絶望と狂気、当時のロンドンという街が持っていたくらいエネルギーを象徴している。

セットが演技する、ってへんな話だと思うのですけどチチェスターで見たときからそう思ってました。なぜだろう?スイーニーの舞台は始まりがよくわからないんですよね。開演が近づくと荷物を運んでるおじさんとか、床をぞうきんで拭いているおばさんとか、荷物整理している若者とかわらわら出てきて、舞台上を行ったりきたりしてる。何だろう・・と思ってるうちにあの音が聞こえる。そしてスイーニーが登場する。この場所しか生きるとこはないでしょ、と思うような風体のスイーニーが。

そしてイメルダさんのロヴェット夫人。舞台に登場したとたん、彼女に眼がいく。言葉を発したとたん、観客の耳も彼女に向く。スイーニーがマイケルさんでよかった。他の俳優じゃまず負けてしまうだろう。たぶんJOJさんでもダメだ。愛してるけどこれは厳然たるじじつ。それくらいの存在感。小柄だけどよく響く声。残酷だけれど愛らしい。おばさんなのに可愛い。

これってミュージカルなんだよね?確かにソロでも歌ってたはずなんだけど、今でも印象に残っているのは二人の声が溶け合っていること、お互いの声がばらばらのピースになって、それがいい具合に混ざって再構成されてた声しか覚えていない。それはもしかしたら眼で観てる二人の動きがそう見えたのかもしれない。全く隙がない、計算されてる動き。余りにもさりげないからどう凄いのかあとにならないとわからないという。
 
CD聞いてると二人のパフォーマンスを目の前で見ているような気になる。そしてあのMBさんの眼の光を思い出す。ブルーグレーの(実際は知らないけど)冷たい光。そして未だに震える。