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シスカンパニー公演「RED」観ました

もう一月程前になってしまいますが、新国立劇場シスカンパニー公演の「RED」を観ました。

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実はこの作品を知ったのは新聞の広告で、だったのです。
新聞の一面いっぱいに赤い背景と小栗旬とREDの文字。一目で興味を引く広告でした(笑)。
特に小栗旬のファンではありませんが、よく読んでみると主人公はマーク・ロスコとその助手ケンの話。数年前にWEやBWでも評判となったアルフレッド・モリーナ(スパイダーマン、ショコラ)&エディ・レッドメインレミゼラブル、博士と彼女のセオリー)主演作品の日本初演とのことで、渡英を控えて倹約中(!)ではありましたが、急遽行くことにしました。(まあ、二階側面のお安い席ですけども(笑))


―STORY―
1958年のある日。20世紀を代表する表現主義派の画家として、名声を手中にしていたマーク・ロスコ
田中哲司のアトリエに、1人の画家志望の青年が訪ねてくる。
ニューヨークの有名レストランに巨大な壁画を描くという大きな仕事のオファーを受けたロスコが雇った助手のケン
小栗旬であった。
まずロスコがケンに要求したのは、毎日朝から晩まで、キャンバスを張ったり、絵の具を混ぜたり、絵筆を洗ったり、画架を立てたり、下地の色を塗ったり、と実際に「絵を描くこと」とは無縁な「作業」ばかり。
しかし、その作業を通じ、ロスコの妥協知らずの創作美学を容赦なく浴びせられ、追いつめられていくケンと、己の芸術的視点に迷い、社会の評価への怒りや疑問にいきり立つことで、創作エネルギーをかき立てていくロスコは、時に反発し、対立しながらも、いつの間にか共に絶妙のタイミングで「作業」を重ね合わせていく・・・。(シスカンパニーREDのサイトより)


舞台は一幕で休憩なし。二人劇。(暗転と同時に薄暗い中、大道具を片付けて次のシーンを作るのも登場人物達)
坊主頭の田中哲司はアルフレッド・モリーナよりロスコ本人に近い感じだけど、奥田英二がもう少し若かったら、彼の方がイメージ合うかなと思ったり。小栗旬はケンにはちょと年上過ぎないかな、とか。
雑念たっぷりで見始めたのですが、とにかく始まったと同時に機関銃のようにしゃべるロスコの強烈さに圧倒されてしまいました。自己中で横柄で人の話を聞かない、ケンのことなんかそのあたりに転がっている消しゴムくらいにしか考えていないようなヤツです、ロスコって。ケンはといえば、過去を引きづりつつもいつか貧乏から抜け出し、自分の筆で世の中の人をあっと言わせたいとは思っている。でもまだまだ経験も知識も浅く、ロスコと初めて会って彼の赤い絵( こういうの )の前で「さあ、何が見える?」と聞かれて、「赤です、Red」と答えてしまう。(あー、そのまんまだよ、ケン!)

ロスコはそんなケンを価値のないもののように扱いつつも、自分の考えや感性を吹き込み続ける、ケンはそんなロスコに反感を持ちつつ、いつしかロスコに刺激を受け、自分の考えや感性を磨いていく。画家とその助手の話は師匠と弟子のようでもあり、父親と息子の話のようでもあります。

田中ロスコは機関銃のようにしゃべりながら、そこらじゅうを歩き回り、ヌードル食べながら、それを飛ばしながら喋りまくる。リアルといえばリアルですが、キッタナイです(笑)。それとちょっと台詞に引っ張られている感じもしたかな。なにせロスコのセリフの多いことと言ったら半端じゃないんで。小栗ケンは中盤まではほとんどセリフも相槌か、しゃべり始めた途端にロスコに遮られたりとか。別に小栗君でなくても良かったんじゃないのと思ってしまうくらい存在感が薄い。このお二人のファンだからというだけで観に行くにはつらいかも。地味だし、カッコよくもないしね。

でも正比例と反比例のグラフが交差したその瞬間、ここが素晴らしかった!一瞬の火花が見えたようでもありました。自身の考えとクライアントの考えが違うと気づきながら、今まで長いものに巻かれないと強気な姿勢を貫いていたロスコが弱気になったその瞬間に、ケンが今まで終始まくし立てていたロスコに変わって、ロスコに浴びせかける言葉。それは愛してやまない父親の弱気を見てしまった息子のような、怒りと失望と愛が混じり合って噴出したような強い言葉でした。(あー、やっぱり小栗君がケンって納得)
お互いを攻め、罵り合っていながら、二人の距離がすっと近づいた、と思った途端のロスコからの一方的な解雇通告。それは、お前が俺から得るものはもう無い。これからはお前だけの力で、世の中をあっと言わせるような絵を描いていけという意味でした。

もう涙が次から次から流れて、私の顔はぐじゃぐじゃ。嗚咽が漏れそうになるほど泣いていた人って私の他に見当たらなかったなぁ、近くには(笑)。あ、一階席であと一人、ヒックって聞こえたような気がするけど^^;
誰でも同じように感じたわけではなかったかもしれませんが、私にとっては芸術家同士の、男同士の、老いゆく人と伸び行く人の、一見厳しいようでもあり、これ以上ないほどの愛を見せられたともいえる素晴らしい作品でした。そして役者自身を少しも意識させない、そこにいるのがロスコとケンだったとしか思えなかったのは、田中哲司小栗旬の芝居が迫真で素晴らしかったからに違いありません。


余談ですが、このマーク・ロスコって、JOJさんが好きだって名前上げていた画家のひとりだったんですよね。この作品で取り上げられている赤の絵、「シーグラム壁画」はテイト・モダンに9点、千葉県佐倉市DIC川村記念美術館に7点あります。渡英の際にはテイト・モダンで、また川村美術館でも見てみたいなと思います。





作品名:シス・カンパニー公演「RED」
観劇日:2015年9月3日
劇場:新国立劇場 小劇場
作:ジョン・ローガンラスト・サムライ、007スカイフォール他)
訳・演出:小川江梨子
出演:マーク・ロスコ田中哲司、ケン:小栗旬



ご興味のある方はこちらもどうぞ。

DIC河村記念美術館 ロスコルーム (千葉県・佐倉市

私たちは20世紀に生まれた:マーク・ロスコの「赤」 http://numabe.exblog.jp/21601815/
(個人ブログなのでリンクしていません)