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Tiger Bay the Musical 11/13 ~ 25 (1) ストーリー

JOJさんが出演されたウェールズ発の新作ミュージカル、Tiger Bay the Musicalを前半は11/13のプレビュー初日~15日のプレスナイト~16日までと、後半23日から最終日の25日まで、ウェールズの首都カーディフにあるWales Millennium Centreで観劇してきました。5月にケープタウンでのトライアウトが済んでいるとはいっても、オリジナル作品なので台本も詳しいストーリーやサウンドトラックなどの資料も全くないので、まずはざっとストーリーから。

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背景:

産業革命以降イギリスの発展の原動力のひとつとなったのが石炭、特に南ウェールズ産の石炭は良質でウェールズ炭と呼ばれて珍重されていました。当時カーディフを治めていたビュート二世は港湾を整備し、カーディフ湾は大きく発展して世界最大の石炭積出港となり、ビュート候は世界一の富豪と呼ばれました。急速に発展したTiger Bayは外国からの労働者、ヨーロッパだけでなく遠くアジア、アフリカからも多くの人々が流入し、まるで人種のるつぼの様子を呈していたようです。一節によるとTiger Bayの呼び名も正式名称というよりポルトガルの水夫の歌から、そう呼ばれるようになったといわれています。当時カーディフの街に住む人々からは、Tiger Bayは恐ろしいところ。近づいては行けないとさえ言われていたそうですが、実際は色々な国の人々が助け合って暮らし、家のドアは開けっ放しで隣の家の中まで丸見えというようなまるで昔の日本の下町のような感じだったそうです。過酷な労働、貧困、さまざまな差別などの問題も抱えながら、たくましく生きたTiger Bayの人々。今は世界規模で同様の問題を抱えている現代の我々も、彼らと共感できる。彼らから生きるヒントを貰えるんじゃないか?史実からエッセンスを取り込みながらも全くのフィクション、新しい物語として、このミュージカルが出来ていったようです。

脚本・作詞はウェールズにルーツを持つ南アフリカの劇作家マイケル・ウィリアムズ、作曲はウェールズ出身のダフ・ジェイムス。「Tiger Bay」はウェールズからのアートの発信源的な位置付けである、ウェールズ・ミレニアム・センター制作の完全オリジナルミュージカルで、南アフリカケープタウン・オペラとのコラボレーション企画。

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ストーリー:

舞台は現在のCarddiff Bay(カーディフ湾)がTiger Bayと呼ばれていた1900年代初期。 物語は5人の主要キャラクターを中心に進行します。

Rowena Pryddy (Vikki Bebb)は山間の村から出て来て百貨店の店員として働いている。Tiger Bayを取り仕切るハーバーマスターSeamus O’Rourke (Noel Sullivan)に求婚され、幸せな前途を疑わない若い女性。

Themba Sibeko(Dom Hartley-Harris)は南アフリカ出身で、当時勃発したボーア戦争(イギリスとオランダ系移民の子孫ボーア人とのアフリカ南部の支配権をめぐる対立。多くの先住民も農地や家を焼き払われ、強制収容所に入れられ、多くの犠牲者が出た。)により妻子を強制収容所で亡くし、Tiger Bayに流れてきた男。港の石炭ワゴンを運搬する厳しい仕事Donkymanとして働き始める。生きる目的を見失い心を閉ざしていた。

John Crichton-Stuart, Third Marquess of Bute (John Owen-Jones)父の代で事業は成功し、当時世界一の富豪と言われていたビュート三世は、カーディフ城の中でひとり孤独に心霊術に没頭している。死んでしまった恋人マリーを恋しく思い、二人の間の息子を探しだすことしか頭になかった。Tiger Bayでの事業も順調で新たに学校も作り、みな幸せに生きていると信じて、オーロックを信用して一切を任せていた。

Ianto (Louise Harvey / Ruby Llewelyn)Tiger Bayに大勢いる孤児Water Boysの一人。石炭ワゴンはレールの上を押して運ばれるが、レールの上に積もった石炭の粉がタイヤに挟まると重くて動かなくなる。彼らはドンキーマンと二人一組になり、ワゴンの前のレールを雑巾で払い続ける仕事をして生きていた。ある日イアントは仲間の為に侯爵の大切なクリスタルマシーンを盗む。仲間にお腹いっぱい食べさせたいという願いをかなえてもらうため。テンバには父のような情愛を感じて、最初は疎まれつつも彼のウォーターボーイになる。

Tiger Bayは様々なルーツを持つ人々の寄せ集め、ここにくれば皆仲間だという人がいる一方で、アフリカ出身やアジアからの移民を差別する地元民との仕事の取り合いがあり、過酷な労働条件を変えたいとストライキを唱えるものも出てくる。そんな中すべてを取り仕切るオーロックは侯爵には嘘の報告をして過酷な労働を強いていた。アフリカーナの女性を愛人に持ちながら、ロウィーナにも求婚するが、少しでも自分に逆らうと女子供でも容赦しない卑劣な男だった。実はオーロックはハーバーマスターになる前、ボーア戦争に出征してアフリカで捕虜収容所に勤務していた。そこでテンバの妻子たちを見殺しにした兵士こそが彼だった。

一方、侯爵を懐柔するため、オーロックはアメリカ人の霊媒師Leonora Piper( Liz May Brice)を使ってマリーの霊を呼んだり(実は嘘)、イアントを侯爵の探している息子に仕立て上げる。侯爵はすっかり信用してイアントに何でも好きなものをあげるというが、賢いイアントは侯爵に本当のことを告げる。「あなたの息子になれたらよかったんだけど、ぜったいに無理なんだ」男の子ではないから息子にはなれない、と。イアントは生きるために男の子のふりをしていたのだった。そしてあなたを必要としている人は他にいる、と、侯爵をTiger Bayに連れ出し、実態を見せる。やっと目が覚めた侯爵は、息子は見つからなかったけれど、自分のやるべきことを見つけ、自ら泥まみれになって学校という名のしごきの場からWater Boys達を助け出し、労働者たちの環境改善に乗り出す。

ロウィーナはオーロックの不実を知って婚約は破棄し、自分も今まで「女性らしさ」、「女のくせに」というような世間の常識に縛られ自分を偽って生きて来たと悟る。お飾りのようだった百貨店の仕事を辞め、子供たちの救済に奔走する。イアントを通してテンバとも心を通わせるようになる。

そうするなかストが決行され、オーロックと一部の労働者がもめ、威嚇のためオーロックの発射した銃弾が誤ってイアントを絶命させる。自分の妻子を殺したのがオーロックだと知っても必死で復讐を思いとどまったテンバだったが、再び生きる希望とでもいうべきイアントが殺されたことで、もう復讐を我慢することは出来なくなった。オーロックを血だらけになるほど殴り、とどめを刺す一歩手前で、ロウィーナが言った一言が彼を思い留まらせた。「You are not better than him!」(直訳するとまあそのとおりだけど、復讐からは何も生まれないって意味だと思う。拡大解釈だけど)

イアントを偲んで集まった人々。イアントは風のように去って行ってしまったけれど、彼女の結んだ糸が新しい絆を作り、残された人々は力強く明日へ向かって生きて行こうとする。(ラストに登場する人々の中には軍服に身を包む者、従軍看護婦の腕章をつける者。Tiger Bayの人々にも、第一次世界大戦の波は迫ってくる。)


ざっとストーリーはこんな感じです。次は感想をまとめようと思います。(2)に続く



--Tiger Bay - Cast--

Rowena Pryddy   ---   Vikki Bebb

Themba Sibeko--- Dom Hartley-Harris

John Crichton-Stuart, Third Marquess of Bute   ---   John Owen-Jones

Seamus O’Rourke   ---   Noel Sullivan

Ianto  --- Louise Harvey 

Ianto   ---   Ruby Llewelyn

Klondike Ellie / Ensemble  ---   Busisiwe Ngejane

Marisha / Ensemble --- Suzanne Packer

Fezile / Ensemble  ---   Luvo Rasemeni

First Mate / Locke --- Rhidian Marc

Arwyn Jenkins --- Ian Virgo

Leonora Piper --- Liz May Brice


Yusef Mohamed / Ensemble   ---   Zolani Shangase

Bosun / Ensemble --- Adam Vaughan

Cadi / Ensemble --- Lucy Elson

Mali / Ensemble --- Zoe George

Lowri / Ensemble --- Elin Llwyd

Donkeyman / Ensemble --- Lee Dillon-Stuart

Donkeyman / Ensemble --- Daniel Graham

Donkeyman / Ensemble --- Joshua Tonks

Ensemble --- Jamal Andreas

Ensemble --- Kit Esuruoso

Ensemble --- Soophia Foroughi

Ensemble --- Carl Man

Ensemble --- Kayed Mohamed-Mason

Ensemble --- Cilla Silvia

Ensemble --- Ernestine Stuurman

Ensemble --- Emma Warren

Ensemble --- Stephanie Webber


Water Boys





参考:

The Third Marquess of Bute: Real and Imagined

Remembering Tiger Bay: Historic pictures of how it used to look

ガイドブックに載っていない英国ウェールズ案内・石炭

ボーア戦争

Tiger Bay the Musical

The Tiger Bay Story(Amazon Kindle)