今日も明日もJOJさんとか色々と

ジョン・オーウェン=ジョーンズさんをLove&Watchしてます。その他のネタも多し。

オペラ座の怪人ケン・ヒル版 観劇録(3)

書きかけのまま、JOJさんの再度の来日&怒涛のソロコンへと突入し、すっかりほったらかしになっていた観劇録ですが、10/20付で追記をしてのアップです。

既にソロコンの記事では書きましたが、観劇録(2)で書いたWhile Floating High Aboveの「ヒミツ!」の件、公開リハーサルの時のQ&Aや、アコースティック公演の時に、JOJさんご自身が話して下さって謎が解けたので、こちらにも書いておきます。

ファントムはあの場面の最初からずっと墓石の陰に潜んでいて、クリスティーンの歌やらラウルとのからみのシーンなど、ずっと墓石の陰で息を殺して(膝立ちで、寝ないように頑張って(笑))見守っていたんですね。それでやっと歌の場面になったら顔を横に向けて、なんとかモニターに映った指揮者を見ながら、あの美しい歌声を響かせていたんだそうですw

それと舞台の上には姿が見えない間も、上手、天井、客席の後ろなどから聞こえるファントムの声。あれもマイクのセットしてある場所でセリフを言うため、上手、下手と走っていたんだそうです。舞台上の場面とは裏腹に、右へ左へ走っているJOJさんを、ちょっと見てみたかったですね(笑)。

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というわけで、やっとここからAct2でのファントムについて


地底湖でのシーン

ここはALW版と同じように舞台奥から小舟に乗ったファントムとクリスティーンが現れる場面。ある意味であの情景のもとはこれだったんだなという感じで納得。もっとも舞台装置が簡素なケン・ヒル版では、水中から湧き上がってくるような燭台もないし、ボートも電動じゃなくて足漕ぎだけどね^^;(でもイメージをデザインするという意味で、やっぱりオリジナルはケン・ヒル版の方だと思うんですよ、私は。そこはちょっと軽視されているように感じるなぁ。)

JOJさんは、どうもこのボート漕ぎには手こずったみたい。初日はコース取りが上手くいかなくてゴツンとぶつけちゃったり。それを見ちゃったから、その後はこちらもこのシーンになるとちょっと緊張しちゃったりしてね(笑)。ALW版と違うのは、一緒に乗っているクリスティーンが、あちらは好奇心と不安が綯い交ぜになった目であたりを見渡しているのに対して、こちらは既に気絶した状態だってことですね。ボートの舳先から落ちそうに見えるほど、あおむけでそれこそ頭が水面につきそうなクリスティーンのガラス細工のような美しさ。耽美的というか、ちょっと美意識をくすぐられる情景w 地下の船着場に到着して、気が付いたクリスをお姫様抱っこで上陸させるのは、ピーターさんの時にはなかった振付。WEのALW版ファントムならではお姫様抱っこを、ここは反対にJOJさんが逆輸入したのかしらね?

ラウル達追手の声が聞こえ、気が付いたクリスティーンを船着場の杭に縛り、急いで引き返すファントム。対岸に渡って壁付きの梯子を上りながら、振り向いてさっとクリスティーンにかざす手の動きまで美しいJOJさん。一瞬だけど指先から10センチくらい先の空気の揺らぎを感じる。
(暑苦しくてごめんなさい^^; だってあのもっさりクマさんのような風体とは別人なんだもん。いやここだけじゃなく、立ち姿もすっと背筋が伸びて、一挙手一投足に神経が行き渡っていて。やっぱり舞台に立っている姿は本当に素敵なのよw)



ファントムの隠れ家で

リシャールやラウル、ペルシャ人達を灼熱の拷問部屋に閉じ込めて、クリスティーンを地下のチャペルに連れて来くるファントム。どういうことなのか尋ねるクリスティーンに、今度は二度と戻らないというファントム。
この場面での二人の会話、まるでストレートプレイのようで、言葉の抑揚も美しくて、毎回聞き惚れていました。

そしてNe’er forsake me, here remainを歌い出す。

我を見捨てず ここに留まれ  暗闇を共に分かち合おう
汚れなき 美しい花よ  愛が育める 安息の地で
あなたの優しい愛情で  絶望の闇から救い出してくれ
小鳥のように歌う 優しい君よ  この陰に あなたの魔法を
我が音楽の女神よ 魔法の奇跡を  なぜ私と契りを交わさないのだ?
永遠に私のものと呼べないのか?  ああ 私のクリスティーンよ

我を見捨てず ここに留まれ  暗闇を共に分かち合おう
汚れなき 美しい花よ  愛が育める安息の地で
この影に あなたの魔法を  優しい乙女よ 魔法の奇跡を

この影に あなたの魔法を…



ファントムの全身全霊を賭けた愛の告白。
上の映像の撮影時はまだ稽古に入る前だったJOJさん。特に2コーラス目は荒々しく思いのたけをぶつけて。通常はこの歌唱は好きなんですよ、私。一曲入魂ならまさにこんな感じと思う。でもね、原作を読み直してふと思ったのですが、他の誰に対しても冷酷で、皮肉屋で、やさしさの微塵もないファントムが、クリスティーンに対してだけは、荒ぶりそうになる感情を必死で抑える。そういう意味では、ちょっと違うのかなと思っていたのですが、初日の舞台では、JOJさんのファントムは、どこまでもクリスティーンに頼むように、崇めるように、ここを抑えたまま歌い切りました。とても美しくて悲しかった。こういうところがコンサートと本舞台の違いですよね。ファントムの愛の深さをすごく繊細に表現していると思う。

で、クリスティーンにキスしようとして拒まれ、さらに熱い想いを訴えるけれど、マスクを剥ぎ取られるファントム。醜さゆえに自分を愛さないのかと問うファントムに、憐れみはあるけれど、愛はないと言い切るクリスティーン。ケン・ヒル版のクリスティーンは実にきっぱりとしている。そして原作もそうなんだけど、彼女にとってファントムは父が遣わしてくれた音楽の天使。それ以上でもそれ以下でもない。生身の恋愛対象では最初から、ない。

しょうがないんだけどね。

拒否されて、さっといつもの冷たい皮肉屋の仮面をつけるファントム。って、言い方がややこしいけども、この作品中でファントムの歌は、彼の本心というか、仮面を外した姿と言葉。彼の放つ冷酷さと皮肉めいた言葉は、仮面であり鎧なんでしょうね。JOJさんのファントムは、それを自在に演じ分けている。

静かに、ウエディングドレスに着替えるように言われて最初は拒否するクリス。エコーのかかったウィスパーボイス(これが魔法ね)で命令すると言うことを聞くクリスティーヌ。(傷ついたような表情で見送るファントム)

ウエディングドレス姿のクリスティーンに、My Divaよ、 Goddessよ、自分のために歌ってほしい、頼む、と跪くファントム。それでも首を振るクリスティーンへ、師の命令だってだんだん強く言いながら、最愛のクリスティーンを力で動かそうとする、そんな自分に絶望するというか。命令で言うことを聞かせても、意味がないのは十分承知していながら、他になす術がないファントムが悲しくて、こちらも嗚咽が漏れる。


が、ここを素直に悲しませてくれないのがケン・ヒル版(苦笑)
天井からタイムリーに落っこちてくる牧師と立会人とか、結婚式を挙げていると、助かったラウル達が乗り込んでくるとか。なぜ助かったかって?先にファントムが心臓を一突きして殺したはずのレミー(リシャール支配人の部下)の心臓が、右についていて一命を取り止め、彼が皆を助けたって展開(笑)。
そんな馬鹿な~って思うけど、コミカルとシリアスが交互に来るケン・ヒル版だからねw



で、追い詰められたファントムがとった行動とは...


クリスティーンと無理心中すると見せかけて、自分の胸を一突きして倒れるファントム。
自分の姿を見たものは全て殺してきたファントム。最後に全員を殺すのではなく、自分自身を殺した。
そうして自らクリスティーンを手放した。それが彼の愛。
愛を願って、愛されることを願って得られなかったファントムが、クリスティーンを愛することによって、学んだ愛。
ここまで持って行くから、最後に自分を殺すということが、茶番ぽくではなく、本当に重い。


瀕死の際に再び歌う、
Ne'er Forsake Me, Here Remain (Reprise)


JOJさんの美しくて優しささえ感じる高音に、ヘレンさんの清らかな声が重なって。
クリステーンと声を重ねることによって、思いを遂げられたんだと思う。
たった一瞬だけど、クリステーンはファントムだけのもの。
エロティックさは微塵もないんだけど、ある意味で大人の想像力を働かせてもいいかも...

とか思っちゃいました^^:



リシャードが彼にも良心があったんだな、という。
ラウルが、誰にでもあるよ。僕らは誰でも持ってるさ、って言う。
僕ら?じゃあファントムもその中の一人になれたの?と思う。

ファントム、やっと人間の仲間になれたんだね。もうファントムじゃないんだね(涙)



ラスト、ファントムの死後、明るいメロディにのって全員で歌うHe Will Not Go Without A Friend.

He will not go without a friend
Will not go without a friend
Without a friend
Without a friend
And so we end


ここでみんなはハッピーになるはず。
前回は晴れ晴れニコニコしていたのに、今回の演出では全員神妙な顔。
そうだね、これはファントムの葬式なのかもね。
笑ったらハッピー、泣いたらアンハッピー、そんな単純ではない終わり方が、とても演劇的だなと思う。
このエンディング好きだわ。
人間は笑うと寿命が延びる、泣くとストレスが流れ出る、 そのために娯楽はある。
そういう昔気質な作品だなと思いました。


そして、いや、だからこそのカーテンコール、というべきか。ファントムが醜いメイクを取っての挨拶。出演者全員お互いを見合って、笑いあって、本当に楽しかったねーという気持ちを持って帰宅できるエンディングでした。


私が二回目に観た時の会場で、このエンディングの時に誰からともなく手拍子が始まったんですね。最後はキャストがWelcome Sir I'm So Delightedを元気よく合唱して、まあこの歌詞がそのまま今日来場してくれたお客さんへの感謝の気持ちにも通じるっていう、二重に意味のある選曲ですが、でもこの曲の終わりと共にアンコールもなくさっぱりと終わってしまうので、観客の身としてはどこで感謝の意を表していいか難しい。だからこの手拍子は本当に場の雰囲気も壊さず、会場中が一体となって良かったね~って感じが表せて、私はとっても良かったと思いました。



そして最終日は、更に盛り上がって、途中クリスティーヌのアリアにはブラボーの声援が飛び、ラストはフルスタンディングオベーション&手拍子で大円団となりました。もちろんHouse Full!!
(この作品に出演して思い出深かったことのひとつとして、JOJさんも楽日の大盛況、総スタオベについて言及されていましたw)

イメージ 2


ここまでで、長々書いてきた「オペラ座の怪人ケン・ヒル版」の感想は終わります。
考察のようなものも書きたいのですが、私の事だから、それはいつになるかわからないけど(笑)。