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5月16日BW Barrymore Theatre「Death of Salesman/セールスマンの死」/A・ガーフィールドの見事な演技/極上のシャンペンのような舞台だった

なんか月並みな表現でどうもすみません。適切な言葉を捜してたんだけどシャンペンの香りと味しか思い浮かばなくて・・。もしかしてボキャ貧確定ですかね?アーサー・ミラーの余りにも有名な作品を「卒業」や「クローサー」等々の作品で知られるマイク・ニコルズさんが監督。演技派俳優として圧倒的な評価を得ているフィリップ・シーモア・ホフマンとまもなく「アメイジングスパイダーマン」が公開されるアンドリュー・ガーフィールド、BWベテランのL・エモンド、F・フィットロック他共演。

ストーリー概要(Wikiより):
年老いた63歳のセールスマン、ウィリィ・ローマンとその家族の物語。自立出来ない2人の息子や、過去の幻影にさいなまれつつ慨嘆するローマンは、誇りを持っていた仕事まで失い最後には自ら死を選ぶ。その保険金で家の月賦が完済されたことを嘆く妻の独白で幕が閉じる。
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というストーリーですが、これはもう初演が1949年という有名な戯曲ですし、今まで何回も舞台化されてますし今回は期間限定のセレブキャスティングもあって連日満席が続いてます。チケは当然Hot Tixになっていて劇場Box Ofiiceに買いにいきましたがほとんど良い席は残ってませんでした。他の方にはそうでもないでしょうけど私にとっては痛い150ドルちょっとのチケット代。若干見切れる上手側バルコニー席でしたが、じゅうぶんすぎるほどの価値がありました。冒頭のシーン。セットは家の中。時代背景は1940年代のアメリカ。ウィリー・ローマン役のホフマンさんが舞台に登場した瞬間から会場は静まり返ってなんの雑音も聞こえない。トランクを片手にゆっくりと下手から上手に歩いていくウイリーさん。疲労困憊している様子がありありとわかる。冷蔵庫にテーブル。ベッドには奥さんのリンダが寝ている。2階のベッドにはBiffとHappyの息子二人も。

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(A・ガーフィールドのうなじ写真です(爆))

 フィリップ・シーモア・ホフマンが上手いのはわかってましたけど私が驚いたのは息子ビフ役のアンドリュー・ガーフィールド。「ソーシャルネットワーク」や「わたしを離さないで」の演技がとてもよくて、若いのに上手いなあという印象を持ってましたが、舞台はそんなもんじゃないです。大した役者さんです。ビフは頼りない、でもお父さんが大好きな息子でとてもラブリーなのですが、ホフマン父との愛憎入り混じった確執を抱えていて、彼らのやりとりは細部まで実にリアルで、全く眼が離せなかったです。ラストシーン、死を選んだウィリーの墓前に跪くリンダ、うなだれるビフとハッピー。そしてアラスカで成功したアンクルベン。家族のためにひたすら勤勉に仕事に励んできたウィリーが追い求めていたものはなんだったのか。そもそも何かを追い求めていたのかどうか。1940年代の話だけれど2012年の原題にも通じる話。というか太古の昔からある普遍的なおはなし。お父さんはいつの時代でも家族のために働き続け、そしてある日何かがぷっつりと切れてしまう。後に残るのは絆なのか、愛なのか。それとも安堵なのか。いやそんなことはぜったいない。この世の中でいちばん大切なのは家族なのだから。

舞台終了後のカーテンコール、幕が上がったとたん観客ほぼ全員がすぐ立ち上がった見事なスタンディングオベイション。BWストプレの観客はぜんぶ年齢層が高いけれど今回は特にそうだったと思う。それも非常にニューヨークらしいリッチで知的な階層に属する人々。METワーグナーもそうだったけどこういう観客に恵まれた舞台では雑音などの心配は全く要らない。携帯も鳴らないし、話し声も聞こえない。みな息を詰めて舞台を見守っている。こういう中で観劇できるのは実にシアワセ。日本の舞台もそうだけどね。