今日も明日もJOJさんとか色々と

ジョン・オーウェン=ジョーンズさんをLove&Watchしてます。その他のネタも多し。

「ネクスト・トゥ・ノーマル/Next to Normal」at Arden Theatre in Philadelphia/`Normal=正常`のすぐ隣にあるものは・・

10月24日フィラデルフィアのArden Theatre。初見。いやーこれは素晴らしかった。原作はピュリツアー受賞作なのでざっと目は通してあったけど、舞台はかなり違う。いや同じなんだけど訴えかけてくるものが違ってた。これ非常に優れた作品です。日本でも上演して欲しいなあ。

*以後ネタバレ含みます。ご注意!
イメージ 3

イメージ 2


イメージ 1

キャスト:

 Dan  :James Barry
   Diana :Kristine Fraelich
 Natalie  :  Rachel Camp
   Henry    : Michael Doherty
   Doctor Madden/Fine  : Brian Hissong
   Gabe     : Robert Hager

印象に残っている言葉 :
   
Diana    : I don`t feel anything...(何も感じることができない)
Doctor  : Patient is stable (患者の容態は安定している)

Diana    : I miss the highs&lows, all the climbing, all the falling.  I miss the pain.  Everything is 
              balanced here.  Everything is perfect.  NOTHING IS REAL
    (方向がまるでわからない、私は登っているのか、堕ちているのか、高いところにいるのか、
     低いところなのか、痛みも感じない。ここでは全ての調和がとれている。全て完全だ。
     現実はどこにも存在しない)

ミュージカルナンバー:
ACT 1
 Just Another Day/Everything Else/Who is Crazy/My Psychopharmacologist and I)
 Perfect for You/I Miss Mountain/It`s Gonna be Good/He`s Not Here/You Don`t Know
   I am the One/Superboy and the Invisible Girl/I`m Alive/Make Up Your Mind
   Catch me I`m falling/I Dreamed a Dance/There`s World/I`ve been
   Didn`t I See this Movie?/A Light in the Dark

ACT2
   Wish I Were Here/Song of Foretting/Hey #1/Second and Years/Better than Before
   Aftershocks /Hey #2/You Don`t Know/How Could I Ever Forget?/It`s Gonna Be Good
   Why Stay?/A Promise/I`m Alive/The Break/Make Up Your Mind/Catch Me I`m Falling
   Maybe(Next to Normal)/Hey #3/So Anyway/I am the One/Light  

ストーリー:
ダイアナは夫ダンと娘ナタリーの母。平和な家庭生活を送っており、家族を何よりも愛している。いつもの朝のいつもの光景。そんな毎日が続くと誰もが疑わなかったある日の朝、いつものとおりサンドイッチを作ろうとしたダイアナ。でも床の上にパンを広げながら。それを見て一瞬で凍り付くダンとナタリー。平和な日常の崩壊。

ダンはナタリーに精神科の受診を勧め、ドクターマッデンのオフィスにやってくる。Bipolar(双極性障害)の診断がくだり、ダイアナは薬物による治療を始める。色々な薬がバックのスクリーンに登場する。本当に多種多様な薬が。

治療を続けるダイアナ。徐々に家族への影響が広がっていく。幻覚を見続けるダイアナを見て、ドクターはECT(電気けいれん療法)を提案する。悩んだ末、治療法を受け入れるダイアナ。

ダイアナが見ていた幻覚。それは生後8ヶ月で亡くなってしまった息子Gabeの成人した姿。ダイアナは
その悲しみが決して忘れられず、BIpolarを発症したのだ。ECTの治療は断片的な記憶を失う可能性が大きい。けれどそれはダイアナにとって必要なこと。それがドクターの診断。

ダイアナのECT治療の場面でスクリーンにはジャック・ニコルソンの「カッコーの巣の上で」のシーンが投影される。思わず震撼する。

この作品を紹介する記事を読んでてなるほどーと思ったこと。Bipolarの患者自身のことを語っているだけではなく、むしろその病気(症状)が周りに及ぼす影響について多くをさいている、というもの。確かにそうだ。ピアノの得意なナタリーが発表会で失敗してしまうところ、ボーイフレンドのヘンリーと心を通わせていくシーン、そしてダイアナを支えるダンの心境の変化。そういうものがいやというほど見るものに迫ってくる。

ECTを終えたダイアナが家に戻ってくる。ナタリーが思わず駆け寄る。「Who are you?」娘のことを忘れてしまったダイアナ。ショックを受けるナタリー。ドクターに相談すると記憶は取り返せる、たくさん話をしなさい。写真を出して来てみせながら必死でダイアナの記憶を取り戻そうとするダンとナタリー。徐々に思い出してくるダイアナ。でも「なにか重要なことを思い出せないでいるの」と苦悩が続く。Gabeの姿はすぐその側にある。

不調が続くダイアナ。症状を訴える彼女にドクターは「このままではダメですよ、再度ECTをやりましょう」と勧める。彼の口から「息子」の言葉が期せず飛び出して来たとき、ダイアナは記憶=パズルの最後のピース、を取り戻す。

結局ダイアナはECTを受けずに、家を出ること、出なければいけないことを決意する。ダンと対峙するダイアナ。ダイアナが去ったあとGabe(の幻影)と対峙するダン。彼にも見えていた?ナタリーが家に戻ってくる。暗い部屋でソファに座り込むダン。ダイアナが去ったことを知るナタリー。明かりをつけようと提案する。彼女の大事な家族を照らす「Light」

村上春樹の小説の中のフレーズで「思い出は貴方の心を優しく温める、でも内側から激しく切り裂く」「思い出は決して自分から消すことはできない。ただ消え去るのを待つのみ」というものがあったがこの作品を見ながらずっとそのフレーズが頭に浮かんだまま消えなかった。

ダイアナの症状とはだいぶ違うけれどウチの夫も15年くらい前に軽い鬱病にかかったことがある。当時はアメリカをベースにした報道系のカメラマンをやっていて非常に忙しく、おそらく原因はその直前に担当した過酷な仕事だったと思う。本当に大変だったから。それまでとひとが変わったように無気力になってしまったのでかなり心配したけど幸いにして4、5ヶ月で直った。その間、薬物や治療法についても相当調べたし、よいドクターを求めていろんなとこに行った。車で数時間走って日本人精神科医のとこまで行って日本語によるセラピーも受けたけど「なんじゃこらw」という感じで二人して呆れて帰ってきたり。アメリカの都市生活者は日常的に精神分析セラピーに通ってるひとも多く精神的な不調を訴えるひとも多いので(彼ら我慢とかしないしw)調べようと思えば情報はいくらでも出て来たし、特に恥ずかしいことだとも思えなかった。今はそうでもないだろうけど当時日本に帰ったときに、友人にその話をしたら「日本では鬱病にかかったなんて絶対人に言わないほうがいいよ」と言われてびっくりしたのも覚えてる。別に隠すことじゃないのに。

結局のところ仕事が原因だったので、仕事をすることで癒そうとした彼の選択が正解だったんじゃないか、と今では思う。その後起きた911テロやアフガン、イラク戦争の取材も問題なくこなせたし。当時はコドモも小さかったし不安もあったけどあの時期を乗り越えられたのは私たち家族にとってはいい経験になった。。勿論私らのは些少なもので人様に語れることは何もないけど、でも鬱病って決してとくべつなものじゃない。誰でもかかる可能性があるし、真面目で真摯に生きてるからこそ罹患するのではないかとも思う。

今こうして「Next to Normarl」のタイトルを改めて見ると、ウチの夫もそうだったんだよね。「正常」なひとたちのお隣にいたのよ。でも「正常」ってなんだ?「Next to Normal」は素晴らしい作品。これ日本で絶対に上演して欲しい。ラストシーンのダンとナタリーのように「Light」を見つけられるひとはきっといると思うから