今日も明日もJOJさんとか色々と

ジョン・オーウェン=ジョーンズさんをLove&Watchしてます。その他のネタも多し。

WE版「Love Never Dies」をアーリークローズに追い込んだものについて考えてみた

サイモン・フィリップスの演出したAU版「Love Never Dies」の世界にまだ嵌りきってるので本当は1900年代初頭のニューヨーク「コニーアイランド」が醸し出していた怪しい魅力について書くつもりだったのだがちょっと変更。
 
AU版のLNDはそれはそれは素晴らしい出来なのだが、試写を見ているときからずっとあることを思っていた。「これをWE版のキャスト、Ramin(タム)、シエラ(セリア)、デイヴィッドで観たかった」と。特にRaminファントム。AU版のBenも素晴らしかったけどこれは絶対にRaminが演るにふさわしいプロダクション。そう思った。もしWE版が続いていれば彼のファントムでこれが観られたかもしれないのに・・。そう思うと悲しくなった。ロンドンWE版の「Love Never Dies」は本当に素晴らしかったのだ。さんざん理不尽な評価をされた末、アーリークローズに追い込まれてしまったけれど。
 昨年4月に初めて見て、それはそれは嵌ったWE版「Love Never Dies」がなぜあんな理不尽な扱いを受けるに至ったのか、その理由について私的に考察したいと思う。そう、それだけ嵌っているのだ。この作品には。JOJファントムをこのうえなく愛しているので今でも「オペラ座の怪人」が最高の作品だけれどもし彼がいなかったらじぶんにとって最高の作品をあっさりとLNDに変えてることだろう。
 
LNDが受けた理不尽な扱い。当初2011年11月末辺りまでチケットが売り出されていた。それが突然同年9月3日に短縮され、さらに1週間早く8月27日に突然クローズされた。それもあり得ないほどのShort Noticeで。悲しかった。ファンもだけれどキャストの失望感は相当大きかったと思う。ツイを見るたびに心が痛んだ。こんなに素晴らしいパフォーマンスを見せてくれているのに、彼ら&スタッフのこの扱われ方がシンジラレナかった。
 
4月の時点では11月までやる予定だったので10月の渡英の際にまた通いつめる気でいた。しかしまさかのクローズ決定!理由は客の不入り。つまり収支があわないから、という理由でとっととクローズになったのだ。これを聞いたときは耳を疑った。なぜ?作品として不完全なことは確かかもしれない、でもあれだけのキャストの力演とALWの楽曲の素晴らしさは全ての欠点をカバーして余りある。なぜそれがわからない?ちゃんとした眼を持つ舞台ファンならこの作品の素晴らしさはちゃんとわかるだろう。劇場にくれば一目瞭然だ。実際にアデルフィで会ったおばさん(複数)は何回も来てる、大好き!と言っていた。いったいなんでこんなことになるの??
 
どんなクダラナイ舞台でも(WE/BWでそういうのは余りないけど)客が入って収支のバランスがとれてればそこそこ上演は続く。逆に高く評価されても客が不入りだとあっという間に終わってしまう。それがショウビズの世界だ。もちろんそれはよくわかっている。
 
で、いきなり結論:WE版「Love Never Dies」をアーリークローズに追い込んだ一番の理由はは上に書いたように「客の不入り」。そしてその「不入り」を招いたわけ、それは「風評被害」あるいは「ミスリード(誤解or先入観)」。それも舞台を実際に見てない自称シアターファンたちが原因の。それがこの作品をアーリークローズに追い込んだ大きな原因。わたしはそう思っている。
 
作品の不完全さはたしかにあった。AU版の演出にあたりサイモン・フィリップスがいちばん心がけたという「スムースな流れ」がWE版には確かに欠けていた。セットのチープさも気になった(私は大好きだったけれど)。いくつかの歌詞の「え”?」という部分も気になった。しかしラミン(タム)、セリア、デヴィッド・サクストンの熱演はそんなものは吹っ飛ばした。本当に素晴らしかったのだ。4月にこの舞台を観てド嵌りして、あちこちのレビューやら演劇サイトを回るようになってすぐに気づいた。なんでこんなに評判が悪いんだろう。そしてなんでこのひとたちはこんなひどい言葉で作品を揶揄するのだろう。
 
「そもそも「オペラ座の怪人」に続編なんか必要ない。以上、終わり」
「なんだって舞台がアメリカの軽薄な観光地、コニーアイランドになってるんだ。くだらない。そんな設定はありえない。」
「ファントムとクリスティーヌに子供がいるなんて設定はありえない。観る必要などない。」
「全てにおいて安っぽい。オペラ座と比べるべくもない。こんな作品はジャンク」etc.,etc. 
 日本にもあった。実際の舞台を見てもいないひとが(CDだけ聞いていたらしいけど)凄い勢いで作品を批判していた。
 ふーん、かの地ではこういうひとが大挙してネット上で批判を続けてるんだ。そしてそれを目にしたシアターファンが「なんだ、オペラ座の続編だっていくから楽しみにしてたけど見に行くのやめとくわ」とか言っちゃうんだろうなー、ずらっと並んだメディアに批判記事をそのまま受けてスルーするんだろうな、と。ここまで言われちゃ客足が鈍るのは当たり前だ。もし劇場に足を運んだら気に入るかもしれなかったファンまでがこういったネット意見にミスリードされたのだ。これがLNDが受けた「風評被害」。
 
ま、オペラ座の続編としてみると確かに違和感はある。オペラ座のファンであればあるほど。私にもあった。しかし実際の舞台を目にしたら180度変わった。2回目からだけど。どんな場合においても生舞台を見に行かなければ作品の持つ本来の魅力など絶対にわからない。MTファンを自称するなら当然わかっているだろうが。それにしてもネット上のコメントは今思い出してもひどかった。実際に舞台を見に行ったひとのコメントならまだいい。しかし明らかにそうと思えないものが多かった。いったいなんだって観てもいない舞台の批判ができるんだろう。そんなのは作品に対して、パフォーマーに大して、しいては芸術に対して失礼だ、MTファンの風上にもおけない、今すぐやめて!大声で叫びたかった。
 
そう、作品を人前(ネット上)で批判することが許されるのはちゃんと生舞台をみた人間だけだ。MTファンを自称するなら、YTだの、ネットの情報だの、新聞雑誌の記事だのを鵜呑みにして批判することなど決してするべきではない。もしどうしてもそうしたければ人前(ネット上)などで発言せず、リアル友達と深夜のデニーズででも思う存分悪口言い合えばいいのだ。それなら誰にも迷惑はかけない、余計な先入観や誤解を他人に与えることもないだろう。
 
スリードで思い出したのでここでひとつRemarkを入れる。つい先日あるブログ記事に対してコメントを入れた。しかし削除された。理由はわからないがおそらく私のコメントに対し、かなり感情的な返事を返してきたので後になってそれを消すついでに私のコメントもまとめて消したのだろう。自分のコメントは全て下書きするのでなにを書いたかは残してあるのでまあいいが、しかしこれはいかにもフェアではない。反論歓迎と明記している以上、ちゃんと残すべきだ。私のコメントは感情的でもなんでもない、ごくふつうのものだったのだから。そのうち別のテーマの記事でアップするつもりなので読んでもらえばわかると思うが。
 
WEのLNDが被った「風評被害」、あの素晴らしい作品が理不尽な扱いを受けた一因であるミスリード。これを喚起する多くの記述がある記事には黙ってるわけにはいかない。理論武装(そこまで大げさではないが^^;)のうえコメントしたら、案の定もの凄い罵声コメントを浴びたけどまったく当たってないしそれはまあいい。ネットで発言することを選んでいる以上、仕方がない。
 
そのコメントにがっつり書いたけれど、何度でもしつこく言いたい。ネットで発言するときは誰でも皆、言葉に配慮をすべきだ。自分のブログなら何を、どんな表現ででも書いていいわけではない。とりわけある特定の対象を「批判」したいのならより慎重に言葉を選ぶべきだ。ネットで発言すれば不特定の人間がそれを目にする。そして傷つくひとも、怒るひとも必ず出てくる。そしてなによりミスリードされるひとが出てくるのだ。
 
削除される前の私のコメントを見た方数名からサポートコメントをいただいた。中のひとつはWEでアクターをされている方で、当該のブログ主催者によるミスリードを非常に憂慮されていた。同業者の俳優を犬のほうがマシ(!)と称された記事を見ておられたのでそれが理由だろう。あたりまえだ。先入観で俳優の力量を判断されたらたまらない。彼らのメッセージはうれしかった。いつだって同じような思いを共有できるのは大きな喜びだ。彼らが私に贈ってくれた言葉と同様に私は彼らの勇気にも心から感謝している。
 
話をLNDに戻す。昨年8月27日、何人かのブロガーさんが最後の舞台を見に行ってその素晴らしさを伝えてくれた。最高のパフォーマンスを見せてくれたという。彼らの感想を読んでとても感動した。そして見に行けなかったことが本当に悲しかった。こんな扱いを受ける作品じゃないのに・・、本来ならもっと続いていたはずなのに。この作品も他の数多の作品のように戸棚の奥深くに押し込まれ、そして忘れ去られていくのか、と思うと本当に気が滅入った。もう二度とWEには来るのやめよう、と思ったくらいに。
 
でもLNDは復活できた。それも極上の形で。大好きな「プリシラ」を演出し、トニー・シェルドンをBWにつれてきたサイモン・フィリップスが演出を担当、盟友に舞台美術を担当させ、完全に作り変えた。オーストラリアメルボルンで上演を行い、絶賛を浴びたのだ。二度と見られないと思った舞台をまた観られる機会があるかもしれない、これは本当にうれしかった。現在はシドニーで上演中。時期はわからないがたぶんBWにも行くだろう。再びLNDの生の舞台が見られる日が待ち遠しくて仕方がない。
 
しかし私はWE版LNDがどう扱われたかは決して忘れない。これは断じてそんな扱いをされるような作品じゃなかったし、十分な敬意が払われるべきプロダクションだったのだ。このプロダクションが辿った道を考えると今でもくやしい。こんなことが繰り返されないためにわたしはなんどでも言いたい、「MTファンを自称するなら必ずじぶんの眼と耳で観て作品を確認しろ、他人の意見や感想を鵜呑みにされるな、決してミスリードされるな=先入観を与えられるな)」と。